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やっぱり!水彩画

猫の話・前編

猫の話1~10
これは、私たち夫婦と野良猫との交流の話です。



(猫の話1)
去年(2018年)のことです。まだ猛烈な暑さが残る季節。ある日、夫が野良ネコに餌をあげたら食べてくれたと喜んで話します。。そういえば今まで見かけなかった猫がいつも我が家の駐車場付近をうろついていました。
私は野生動物には絶対に餌はやらない主義なので、主人に「軽はずみなことはするな」と注意しました。「野良の命に責任が取れるのか?」と。分かってくれたと信じていたのにその後も主人は餌をやり続けていたのでした。



(猫の話2)ある日ベランダで洗濯物を干しているとお向かいの家のエコキュートの室外機の上に猫がいます。その猫は私と目が合うと『ガー』となきました。多分ニャーとないたつもりだろうが、ダニ声なので『ガー』と聞こえます。
瞬時に主人が餌をあげた猫だと理解しました。私はピシャリと窓とカーテンを閉めて無視しました。

次の日、ベランダに出るとまた猫が居て『ガー』となきます。窓を閉めてカーテンの隙間から観察しているとエコキュートの上で丸くなって寝てしまいました。しばらくたってからまた覗いて見ると同じ形で寝ています。全く動かない。なんと無防備な恰好だろう。これではカラスとかトンビに襲われるのではないかと心配になります。いやその前にこの暑さで干からびてしまうのではないか。いえいえもう弱ってしまって動けないのではないか?まさかもう死んでいるのでは???怖くなってカーテンを閉めてもう見ない!と決意しました。ベランダに出ると死んだ猫が見える!そんな妄想に取りつかれてカーテンを開けることすら恐くなってしまったのでした



(猫の話3)ある日、ベランダに出ると猫がいない。なんて素敵な日だ。猫がいない事がこんなに嬉しいとは思ってもみなかった。でも本当は、猫が死んでいないことが確認できてほっとしている私がいた。
考えてみれば、エコキュートの室外機は相当背が高くその上に難なく上ってしまう猫がそう簡単に死んでしまうはずが無いのだ。自分の妄想にビックリだ。これを機に私は猫を恐れることは無くなり、心の平和を取り戻すことができた。

ところが我が家の冷蔵庫に問題が発生するようなった。少しづつ物が減っている。ソーセージが3分の1だけ食べかけのままの状態で入っていたり。今夜使い切ろうとしていた鶏肉が微妙に減っている。気のせいだろうか?うすうす気付いてはいたのだが、はっきりさせたく主人に問いただすと猫にあげたことを白状した。「ほんの少しだけだよ」とまあ、呆れてしまう。主人が1度だけあげた餌に罪の意識を感じ、猫が恐いとまで思い悩んだ日々、あれは何だったのだ!



(猫の話4)主人が毎日猫に餌をやっていることが発覚すると、私も容認するしかなくなった。すると不思議なことに私にも餌をねだる猫の鳴き声が聞こえるようになる。それもそのはずキッチンの窓のすぐ外で鳴いているだから。でも私は頑として餌はやらず、鳴き声がすると主人に来てるよと合図を送るようになった。
ところが主人が泊りで出張という日があって、少しばかり責任を感じていた私は、仕方がないのでその時だけは餌をあげようと覚悟をきめた。
初めての近距離で猫と対峙です。
窓の外で『ガー』と猫の鳴き声。相変わらずのダニ声である。窓を開けるとまさしくエコキュートの上で寝ていたあの猫でした。黒っぽいトラ柄で、いわゆるキジトラというやつだ。子猫のようでもあり、成猫のようでもある。3メートル離れた場所でこちらを凝視している。仕方がないので朝ごはんに使おうとしていた「ポークビッツ」(極小ソーセージ)を1本あげようとしたが、警戒して近づきもしない。こちらもイチイチかまっている時間もないので皿にのせて地面に置いて窓を閉めたら、アッという間にソーセージをかっさらい遠くへ行ってしまった。きっと落ち着ける場所でゆっくりと食べているのだろう。



(猫の話5)朝と夕方、猫に餌をやるのが私たち夫婦の仕事になりました。秋の日は短い。朝、家の明かりが点くと猫はやってきます。夕方は私が帰り電気をつけると3分もしない内にガーと鳴き声が聞こえてきます。一日中我が家は猫に見張られているようです。餌も猫が野生で生きていけるように多くはやりません。だけど、冷蔵庫の残り物からキャットフードに変わるのは極めて自然な流れでした。餌も持って行くようなことはせず、その場で食べるようになっていました。1日も、1回も休まずそれは続きました。雨の日は足を濡らしてやってきます。体は濡れていません。ちゃんと雨宿りする場補があるらしい。
夫婦で猫の会話になると猫自慢が始まります。私の自慢は、餌を窓の内側に置いたところ、なんと猫が家の中に入ってきてそのまま食べた事でした。主人の自慢は駐車場で猫がすり寄ってきたというのです。私は負けたと思いました。なんとも悔しいではありませんか!!ある日主人が呼ぶので外に出てみると猫が主人と遊んでいます。すると私にもすり寄ってきました。その瞬間に私はこの猫と一緒に布団に入り寝ているのを想像してしまいました。そのためにはたくさんの問題をクリアしなくてはなりません。つい、「この猫警察に届けようか?」と口にしていました。



(猫の話6)警察が何かしてくれるとは思いませんが、拾得物として届け、持ち主が現れなければ私たちの物になるではないか。でも、そんな簡単に割り切れる問題でもないような気がします。主人は夕方になるとたびたび外で猫と戯れるようになりました。私は変わりませんが猫の方が積極的になってきました。
ある日、家の中で食事を終えた猫がすぐ外に逃げずに家の中を興味深そうに眺めているので、ほうっておくとそのまま奥へと進み見失ってしまいました。
知らないうちに外に出たのかもしれませんが、戸締りをする前に一通り探します。バスにトイレ、階段を上がって、子供部屋、ベットの下も注意深く覗きます。でも、居ません。さらに奥、突き当りの部屋で発見。さて、どうやって外に誘導したらよいものか?猫も真ん丸の目で固まっています。別に捕まえようとしたわけではありません。腰を屈めて近づいただけです。すると猫はクルッと回転してさらに奥へ、ベランダに出てそのまま必死のダイブ!!一瞬の出来事でした。ガレージの屋根へ無事に着地したと祈るしかないです。
猫もこれには懲りたようで警戒が強くなってしまったようでした。



(猫の話7)翌日相変わらず猫は家に来ました。どうやら無事だったようです。翌々日になるとまた家の中が気になる様子。先回りして2階へ行く扉を閉め、廊下へも出れないようにすればこれで安心と私は部屋を出た。すると何やらモゾモゾと音がする。扉を開けて覗いてみるとガタン!と大きな音がして猫がカーテンに引っ掛かり宙ぶらりん状態でもがいている。抱きかかえ引っ掛かった爪をカーテンから外し床に卸す。猫は一目散に外へ逃げて行ってしまった。
何が起こった!?多分と想像するしかないのだが、餌がしまってある場所を猫が覚えていて、その棚に上って物色している所で急に扉があいたのでびっくりして飛び上がってしまい落ちていく時に必死でカーテンにつかまったところ爪が絡まってしまった。と言うことなのだろう。まさしく泥棒猫だ。
いつだって猫は私たちの考えの上を行く。我々があまりにも猫に対して無知だったのかもしれません。猫は初めからいつだって餌の確保が最重要課題だっただけのことだ。でも、初めて抱いた猫の体はなんとも柔らかく温かかった。



(猫の話8)猫の「ベランダからダイブ事件」「カーテンに宙ぶらりん事件」このふたつは私のとっておきの自慢話として面白可笑しく主人に伝えた。悔しそうな顔を期待したのになぜか嬉しそうだ。それからというもの主人は餌やりの後、しばらく家の中で猫と戯れるようになった。もしかしたら私が猫嫌いだと思って遠慮していたのかもしれません。
季節は否応なくめぐり、私も忙しくなり家に帰る時間が遅くなる。それに反して日没は早まるばかりだ。猫は待ちきれず家に明かりが点くと必死に合図を送り、窓に飛びついて網戸をガリガリすることもあった。ある日路上で私を見つけると。そっと後をつけてきて、玄関扉を開けるとスーッと足元をかすめ家の中に入り、真ん丸い目を向けて「ガー」となく。参りました。可愛くて仕方がないではないか。つづく



(猫の話9)年始年末の休暇に入ると、一気に猫は家の中にいる時間が増えてきました。基本的に家族が家にいる時間は猫も家の中にいます。そして就寝の時間になると外に出されます。もう寒いので何ともかわいそうではありますが、仕方がありません。そのうちに小さなお留守番も何回か経験させてみました。キッチンに入れると途端に餌を漁る『泥棒猫』になりますので、リビングの狭い部屋に閉じ込めることになります。
ある日、夜の11時を回ったので猫を外に出して眠ろうとしましたが、外は雪が舞っています。ストーブを消してしまっても外よりは過ごしやすいはず、「まあ、いいか」とそのままリビングに閉じ込めたまま一夜を明かしました。それがどういう意味か私たち夫婦はよく解っていました。翌朝元気に外に出て行った猫はすぐに帰ってきてまた主人膝の上で寝ています。本当にこれでいいの?問いただしても猫は答えてはくれません。



(猫の話10)飼い猫となった猫のためにトイレと爪とぎを買った。爪とぎは与えたその時から使い始めたが、トイレは使い方をどう教えたらよいものか?ただ置いておくだけだった。近所には申し訳ないけれど、猫はどうしても外で用を済ませたいらしい。
あと、気になることは本当の飼い主がどこかに居るのでは無いかという事。この先避妊手術もしたいと思うが人の所有物に勝手にメスを入れるわけにはいかない。心当たりに聞き込みをするが、情報は得られなかった。
このころは本当に都合の良い飼い方をしていた。来客が来るたび寒い外に放り出されるのだ。でも、猫はOKが出るまで辛抱強く待ち続けてくれる。何とも聞き分けの良い猫だった。そろそろ一度動物病院に連れて行ってみたい。いろいろ相談もしたいし。でも、どうやって連れて行くのだろう?何もかも分からないことだらけだ。とりあえず、偵察に動物病院の玄関まで見に行ってみる。
するとそこに張り紙があった「猫を探しています」とキジトラの写真付きです。まさに我が家にいる猫そのものだった!!つづく
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